
欧風菓子 白鳥 スワンシュークリームの顔が可愛くなるように
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「白鳥(しらとり)」という素敵な店名は名字から。昭和41年に創業、今年で55年になる中板橋の洋菓子店は、都内でも珍しくなったスワンシュークリームや美味しいお菓子を求めに、多くの方が訪れる人気店です。1階は販売、2階はイートイン、その上の3階で、すべてのお菓子と喫茶メニューを製作する白鳥忠光さんに、ロゴマークを作られた先代の話、スワンシュークリームや喫茶メニューのこだわりを伺いました。

――「白鳥」のロゴマークは店名と同じ白鳥がモチーフですが、円の中に白鳥を象った形がシンプルながらとても印象的です。ロゴマークはどなたが作られたんですか?
忠光さん「僕は2代目になるんですが、ロゴは先代の父が作ったもので、生まれた時にはすでにありました。もう亡くなっているので、細かい経緯はわからないのですが・・母に聞いても『お嫁に来た時にはもうあったから』って。長いこと使っているロゴなので、愛着はありますね」
――「白」鳥なのに緑色っていう所がすごくおしゃれですし、長く愛せる素敵なロゴですよね。看板の色も、床のタイルやソファの色と同じ緑ですね。お店の優しい雰囲気に合っていると思います。
忠光さん「先代が緑が好きだったんです。僕も好きですし、色を変えたいと思ったことはないです。昔からうちのマークだから愛着が湧いているんです」

――50年以上変わらずこの地にあって、この街に住む方達も見ると「帰ってきたな〜」とホッとするロゴなんじゃないでしょうか?それと同時に街に馴染んで当たり前のようにあるけど、よく見るとすごく秀逸なロゴという印象です。
忠光さん「ありがとうございます」
――トートバッグには人気メニューのスワンシュークリームを描かせていただきました。

忠光さん「こんなにお洒落になっちゃっていいんですか?(笑)」
――シュークリームとお店の緑のソファー、そして印象的なタイルと白鳥さんの好きな所を全て詰め込みました(笑)あと、細かいですがロゴの入ったペーパーナフキンもとても可愛いんですよね。シュークリームですが、作る上でのこだわりはありますか?
忠光さん「スワンシュークリームは創業当時からのメニューですが、材料はいいものを使って、可愛い顔になるように作っています」
――顔が可愛くなるように!なんだかうれしいです。食べる時に緊張しますね(笑)
忠光さん「羽をつけて首をつけて顔が可愛くなるように、って。あと、カスタードクリームは卵黄だけで作っています。お店によっては全卵ですが、本来の作り方は卵黄なので、(粉と砂糖を)混ぜたときに粉っぽさがなくなるまでしっかり混ぜ込むようにしています」

――スワンシュークリームは手間もかかりますし、都内でもほぼ見かけなくなっているので、とても貴重です。それでいて280円というお値段。もっと高くてもいいと思うんですが・・。
忠光さん「これでも20円くらいは上がっているんです。もっとあげればよかったんですが、今更上げられなくて(笑)」
――白鳥さんといえば、スワンシュークリームの他にも沢山の美味しいケーキがありますが、現在のケーキの種類は創業当時と変わりましたか?

忠光さん「先代の時には入れ替えがありましたが、自分の時からはあまり変わってないです。レシピは引き継がれているので、昔のものも作れますよ」
――秘伝の書、みたいなものがあるんですか?
忠光さん「そんな立派なもんじゃないです(笑)アナログな時代だったからメモ用紙が集まってるだけです(笑)」
――今は作っていないけど、忠光さんが子供の頃好きだったケーキとかもありますか?
忠光さん「フワフワのスポンジに生クリームが入っているマッターホンっていうケーキは好きでしたね」
――美味しそう!いつか期間限定でお願いします(笑)

――白鳥さんは喫茶メニューも美味しいですよね。ジャージャー麺まであるのが驚きました。
忠光さん「昔はパン類だけだったんですが、カレーなどは20年前から始めました。ジャージャー麺は僕が好きだったから(笑)。あと、僕が好きなのはアイスコーヒーです。ネルドリップで淹れています」
――白鳥さんは今年で55年になりますが、長く続けられた秘訣はなんだったんでしょうか?
忠光さん「流行りに乗らなかったのがよかったのかな、乗れなかったというか(笑)。父が生きていた頃は、もう少し新しくしたほうがいいんじゃないかと思ったこともありましたが、流行りに乗って、最先端のお店の真似をしなかったのがよかったのかなと、年をとった今は思います」

――同じものを同じクオリティで長く続けるって一番難しい事じゃないかと思います。
飽きちゃったな〜とかないですか?(笑)
忠光さん「今日はスワン作りたくない、今日は並びません。ってそういうのはないです(笑)」

――これだけお店を長くやっていると、子供の頃に通っていた人が大人になって、自分の子供を連れてきた、なんていうこともあるんじゃないでしょうか?
忠光さん「それもありますし、以前、ここに住んでいて、30年ぶりに来た人が、たまたま通りかかったら『まだつぶれてなかった』って買っていってくれるのが嬉しいですね。もちろん、いつも来てくださっているお客様も嬉しいですが」

――久しぶりに来た町に、好きだったお店がまだあると本当に嬉しいです。
忠光さん「僕も、昔通っていた食堂がまだあって、同じものを食べられるのは嬉しいと思いますしね。最近は電車に乗られて来る若い方も多いんです。写真を一生懸命撮ってくれて。ただ長時間の撮影はシュークリームならまだいいけど、クリームソーダだと大変なことになるので早く食べる事をおすすめします(笑)」

1階の販売ではお母さまが元気に接客する姿が印象的な白鳥さん。コックコートがお似合いの忠光さんは、普段はTシャツを着られることが多いとか。お店ではTシャツを着られた皆さんにお会いできるかもしれません。
欧風菓子 白鳥
住所:東京都板橋区弥生町31-15
電話:03-3958-4425
営業時間:10:00~20時(喫茶は19:00L.O)
定休日:水曜、正月、お盆に不定期休み
(TEXT/山内菜穂子 PHOTO/細谷謙介)